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マタニティ歯科

Ⅰ.妊婦さんに知っておいて欲しい歯科医院を選ぶポイントは?

誰でも初めて歯科医院を受診するときは不安を抱えているのではないでしょうか。
しかも、お腹に新しい命を抱えていたとしたら、その不安はより高まっているはずです。
今回は妊婦さんが歯科医院を選ぶ際に必ず確認してほしいポイントについてお伝えさせていただきます。

  1. 1)安心して治療を受けられる
  2. 2)産後のフォローまで受けられる
  3. 3)丁寧な対応、適切な治療
  4. 4)その他

1)安心して治療を受けられる

 もうすぐ母親になる妊婦が一番に考えていることはお腹の赤ちゃんのことでしょう。どのような時でも自分のことよりお腹の赤ちゃんの心配をしていると思います。歯科治療をしても大丈夫だろうか」「麻酔や薬は?」「X線撮影をしても大丈夫かしら」などたくさんの不安が頭をよぎり、歯科治療を敬遠してしまってはいませんか?
そのような不安がいっぱいの妊婦さんなので、まず一番必要なことは【安心】して治療を受けられるかどうかという点です。

 では、どのような医院が妊娠中の患者さんの【安心】を満たすことができるのでしょうか。

まずはスタッフ全員が妊娠に対する深い知識を持ち、問診を非妊娠時以上にしっかり時間をかけて行っている医院だと思います。そして、妊婦は歯科治療が可能であるということをしっかり理解し、治療時期と薬物の量などを考慮すればほとんど赤ちゃんには影響なく治療が可能だという情報をしっかり提供している医院であれば、信頼できる歯科医院と言えるでしょう。それに加え、歯科医師が産科医との連携をとり、具体的に使用する薬剤の指定など細かい情報提供を受けた上で治療に臨んでいる歯科医院が安心して治療を受けられる歯科医院と言えるでしょう。

2)産後のフォローまで受けられる

 子供が生まれ毎日の育児に手一杯のお母さんは、自分のことは後回しになりがちですよね。妊娠から授乳期の一番めまぐるしいこの時期、女性の口腔内は一気に崩れやすく、う蝕や歯周病が多発しやすいと言われています。出産前に産後の歯科受診の重要性をしっかりと説き、母子共に口腔管理をしていくことの重要性を伝えてくれる歯科医院を選択されるのが良いかと思います。

 妊娠してから産後の授乳期には、お母さんの多くが「赤ちゃんは自分のようにむし歯や歯周病にならないようにしたい」と強く考えている方がほとんどだと思います。モチベーションの上がるこの時期にしっかりと歯科保健教育を行ってくれる歯科医院を選ぶと良いでしょう。

3)丁寧な対応、適切な治療

 女性は妊娠から出産という10ヶ月ほどの間に、心身ともに大きな変化が伴います。つわりの辛い時期や、お腹の張り、頻尿や腰痛など妊娠すると様々な症状が現れます。周産期は抑うつ状態を生じやすい時期であり、日本人におけるその頻度は10〜20%と高い割合が報告されています。肉体的にも精神的にも負担がかかりやすいので、受付の対応や電話対応が良い医院、治療時の接し方が良い医院を選ぶと良いでしょう。できる限りノンストレスの環境で治療を受診することをオススメいたします。

4)その他

 清潔感があり、感染予防対策がしっかりされている医院を選択しましょう。また、バリアフリー設計されている医院かどうかも重要なポイントです。また、来院の際には医院のHPを必ず確認し、マタニティ歯科に力を入れている医院かどうかを確認することも大切です。

Ⅱ.妊娠中に起こる可能性のある問題

1)妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)

妊娠高血圧症候群は妊婦のおよそ5%にみられます。主な症状は血圧上昇と蛋白尿であり、普通妊娠20週から産後1週間の間に発症します。妊婦の年齢が15歳以下または35歳以上の場合に妊娠高血圧症候群になりやすい傾向があります。

2)妊娠糖尿病

妊婦のおよそ1〜3%が妊娠中に糖尿病を発症します。糖尿病の発生に気づかず治療を行わない場合、母子ともに健康上の問題が生じるリスクが高くなり、胎児が死亡する恐れもあります。肥満した女性や高齢出産、特定の民族(特にアメリカ先住民、太平洋諸島系、メキシコ系、アジア系)の女性に多くみられます。原因は、妊娠の影響でインスリンの働きが低下することにより起こります。

3)妊娠中の脂肪肝

妊娠末期に起こる稀な病気で急性妊娠脂肪肝ともいい、原因は不明です。吐き気、嘔吐、腹部の不快感、黄疸などの症状がみられ、急速に悪化すると肝不全を起こすこともあります。脂肪肝が発見された場合は、直ちに妊娠の継続を断念するよう勧められる可能性があります。妊娠を終了させない限り母子ともに死亡するリスクが高いため、緊急分娩が必要となります。

4)産褥性心筋症

妊娠後期または産後に心筋が障害されることがあり、原因は不明です。心臓病のない女性が分娩を契機に心不全症状をみるに至るものでかなり稀な病気です。分娩後しばらくすると正常化する例が多いが回復しない例もあり、このような場合は次回の妊娠でも産褥性心筋症を起こすことがあるため、以後の妊娠は避けるべきです。

  • ※産褥(さんじょく)・・・妊娠および分娩によってもたらされた母体や生殖器の変化が、分娩の終了から妊娠前の状態に戻るまでの期間のこと

5)マタニティブルー

一般的に分娩後3~4日目に起こる一過性の軽度のうつ病のことです。心が不安定に揺れ動き、疲れやすい、夜よく眠れない、興味の減少、飽きっぽさ、自信のなさ、涙もろさなどの症状が現れます。通常1~2週間で自然治癒するため治療の対象ではないが、周囲の気遣いが必要です。

Ⅲ.妊娠中の女性ホルモンと歯周炎の関係

1)妊娠性歯肉炎

女性ホルモンであるエストロゲンプロゲステロンは、月経サイクルに関わるホルモンであり、卵巣から産生されるため両者を卵巣ホルモンともいいます。妊娠の経過とともに量が増加し、その変化量は非妊娠時と比べ、エストロゲンで10〜100倍、プロゲステロンで10倍に達します。これらのホルモンは子宮だけでなく口腔内にも作用し、妊娠中のエストロゲンとプロゲステロンの増加は唾液や歯肉溝滲出液にも反映され、歯肉に様々な変化をもたらします。

妊婦によく認められる「妊娠性歯肉炎」は女性ホルモンによる口腔内の変化とプラークの存在があいまって起こり、症状は一般の歯肉炎と同様、歯肉の出血、発赤、腫脹であり、プラークコントロールを良好にすることで炎症を最小限に抑えることができます。

2)女性ホルモンが口腔内細菌に及ぼす影響

妊娠中のホルモンレベルの変化はプラーク量や総細菌数でなく、プラークの質に影響すると考えられており、妊婦においてプラーク量が増加しなくても、歯肉からの出血が上昇することが報告されています。

妊娠12〜16週において、歯肉縁下プラーク内の細菌のうちPrevotellaintermedia (プレボテラインターメディア)という菌が女性ホルモンを餌にして選択的に増加します。また好気性菌(酸素がないと生きていけない菌)に対する嫌気性菌(酸素がなくても生きていける菌)の割合が増加し、これらの細菌叢の変化が妊娠性歯肉炎の一因とされています。

3)女性ホルモンが歯周組織や免疫応答に及ぼす影響

歯周組織には女性ホルモンのレセプターが存在しており、女性ホルモンの増加により歯周組織も反応を起こします。組織の変化としては、女性ホルモンの作用で毛細血管が広がり歯肉から出血しやすくなる、血管の抵抗性が下がり血流が増加する、免疫細胞の働きを弱めてしまうため歯周組織が感染しやすい状態になるなどの影響があります。

Ⅳ.歯周病と早産・低体重児出産の因果関係

1)早産・低体重児出産とは

早産とは、妊娠22〜36週の間、つまり通常の出産(妊娠37〜40週)よりも早い時期の分娩のことです。頻度としては出産の5〜11%とされています。主な原因は母体側の健康状態であり妊娠高血圧症候群、前置胎盤などによる母子救命のための人工早産と、前期破水などによる自然早産があげられます。

低体重児出産とは、出生時体重が2500g未満の出生児のことです。その原因としては早産や子宮内での発達異常があげられます。

2)歯周病が早産・低体重児出産を引き起こすメカニズム

妊婦が歯周病になると、歯周組織の破壊が通常より急速に起こり、歯周ポケット内で嫌気性菌の出す毒素に対して免疫細胞が反応を起こします。その反応により炎症を抑えるための物質が産生されますが、それらが血流に乗って子宮に達すると、子宮を収縮させる作用をもたらしてしまい、早産につながるとされています。さらにそれらの物質には血管収縮をもたらし、胎児の成長を阻害するものもあります。

3)歯周病による早産・低体重児出産のリスク

従来から、妊婦の喫煙やアルコール飲料の摂取、炎症性の感染症により低体重児出産の可能性が高くなることが報告されています。飲酒をする母親の早産のリスクは約3倍ですが、歯周病に罹患している母親のリスクは約7倍になります。

Ⅴ.こどもの歯を守るために

1)妊娠期の注意点

妊娠中の母親の食事から吸収された栄養は、胎盤を通して胎児に届き歯の形成、成長に関与します。そのため、歯の形成に必要な栄養素が不足しないように心がけることが大切です。

歯についてはカルシウムだけが強調されがちですが、これは誤りであり、歯をつくるのに欠かせない栄養素としては、 タンパク質、ビタミンA、D、B1、B2、B3(ニコチン酸)、C1、鉄、ヨウ素、マンガン、亜鉛、フッ素などがあり、 歯の大部分をつくる石灰分がカルシウムとリンから成り立っています。カルシウムの摂取が十分でも、 リンのとり方が不十分だと逆にカルシウムの吸収も悪くなることがわかっており、そのバランスが重要であるといえます。

つまり要点は「子供の良い歯は妊娠中の食生活から」ということです。歯の成長と発育には、他の器官とくらべて、妊娠初期というきわめて早い時期にスタートし、 比較的短い期間で完成してしまう、という特殊性があります。しかも、いったんできあがってしまうと、歯にはほとんど新陳代謝がないので、あとからいくら必要な栄養素を補っても歯はとり入れてくれません。 歯の発育期、とりわけ妊娠中に、栄養を含めた環境が悪いと、その悪影響は歯の質にまで反映して永久にとり返しがつかないことになってしまいます。出生後に成長する歯についても同じことがいえます。お母さんの妊娠中の食生活が、子どもの歯の運命をも左右するのだということを理解していただくことが大切です。

葉酸
胎児の細胞分裂に不可欠
亜鉛、鉄
胎児へ血液、酸素を送る
カルシウム
胎児の骨組みや歯を作る
タンパク質
胎児の血と肉を作る

2)生まれてから1歳半頃までの注意点

① 食生活
4〜5ヶ月頃から離乳食が始まって、1歳半頃にはそろそろ卒乳の時期になります。この時期は食生活習慣を形成する大切な時期です。極度に甘いものを好きにしないように気をつけ、飲食物はだらだらと時間をかけすぎないことが大切です
② ブラッシング
上下8本の歯が萌出してきたらブラッシングの練習を始め、子供に歯ブラシの感触をなじませ、ブラッシング習慣をつけさせましょう。右図のような体勢でブラッシングをすると良いです。飲食後にブラッシングできなくても、必ず寝る前にはブラッシングをしましょう。
③ 歯科医院におけるう蝕予防
歯科医院にでのフッ化物によるう蝕予防を始めましょう。

3)1歳半頃から3歳頃までの注意点

① 食生活
3度の食事を十分摂り食事のあとはお茶、水を飲ませ終了するようにしましょう。間食の摂らせ方は食べる量だけを出すようにし、遊びながら食べるなど長い時間をかけないようにしましょう。
② ブラッシング
歯ブラシを持たせ自分で磨くことを覚えさせ、本人磨きの習慣を徐々につけさせましょう。この時保護者は口を開け向かい合い、保護者の頬に指で「こっちよ、次はここよ」と順番を教えるとスムーズにできます。最後は上手にできたことを褒めて終わりにしましょう。しかし、自分で丁寧に磨けるわけではないので実際に歯を磨くのはお母さん、お父さんのお仕事です。
③ 保護者へのブラッシング指導
子供を仰向けに寝かせ、頭の方から子供の口を覗き込み、左手で子供の顎を支え、ブラッシングは右上からあるいは左上からなど磨く順番を習慣づけさせましょう。左手の人差し指を使い、磨く歯が見えるように唇を排除しながら磨きます。前歯は表側、裏側の2面、奥歯は外側、噛み合う面、内側の3面を別々に磨きましょう。
④ 歯科医院におけるう蝕予防 
定期的なフッ化物塗布によるう蝕予防を始めましょう。

〜感染の窓について〜

感染の窓とは、もっとも母子感染しやすいとくに危険な時期のことで、乳歯の奥歯が生えてくる1歳半から3歳くらいの間のことを言います。むし歯の原因菌であるミュータンス菌が感染する時期が遅ければ遅いほどお子さまのむし歯予防につながります。

この時期にミュータンスレンサ球菌の感染および定着(歯の表面に住み着くこと)がなされなければ、う蝕リスクが少なくなることが種々の疫学研究から明らかとなっています。

4)3歳頃から6歳頃までの注意点

① 食生活
一人で冷蔵庫を開けることができるため、甘いものの買い置きに注意しましょう。飲食後には水またはお茶を飲むことを定着させましょう。
② ブラッシング
本人がブラッシングするよう習慣づけさせましょう。しかしブラッシングのテクニックは十分とはいえないため、夜寝る前に本人が磨いた後保護者が点検しながら再度磨いてあげるようにしてください。フロスの使用も必要になります。
③ 歯科医院におけるう蝕予防 
引き続きフッ化物による予防を行いましょう。特に第一大臼歯にシーラントを行うのも一つの方法です

〜むし歯予防のためにできること〜

親のミュータンス菌の数が多い場合ほど、子供のミュータンス菌の数も多くなり、むし歯になるリスクが高くなると言われています。子供のむし歯を減らすには、まず母親を含め、周りの家族全員が自分のミュータンス菌を減らす努力をする事がとても大切です。

歯が生え始めたら、食器やコップを共有したり、大人が噛んだものを口移しであげたりするのは厳禁です。おやつもだらだら食べないように時間と量を決め、食べた後はしっかり歯を磨くか、水で口をゆすぐだけでも予防効果はあります。

TIME
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金曜 ★:15:00-18:30

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