歯医者で働く、子どもを持つママ達のブログ

2025.01.14妊娠中に気をつけたい「妊娠性歯肉炎」とは?

こんにちは!

妊娠中の方に起こりやすいお口のトラブルに、「妊娠性歯肉炎」があります。今回は、妊娠性歯肉炎の原因や、セルフケアとプロフェッショナルケアについてご紹介していきます。

 

妊娠性歯肉炎の原因

妊娠中は、平常時とホルモンバランスが変わります。エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンの分泌が増えることが妊娠性歯肉炎の原因となります。歯周病原菌の一部はこの2つのホルモンを栄養源として増殖するため、歯ぐきが腫れたり、出血するような症状が出やすくなります。

また、妊娠中はつわりの影響で歯磨きが思うようにできなかったり、食生活が不規則になりがちで、お口のトラブルが増える傾向にあります。

 

妊娠性歯肉炎がもたらす影響

妊娠性歯肉炎は、単に歯肉炎の症状を引き起こすだけではありません。症状が進行すると、サイトカインやプラスタグランジンといった炎症性物質が多く産生されます。これらの物質は、子宮を収縮させたり子宮頸部を拡張させるような作用をもつため、早産や2500g未満の低体重児出産のリスクが高まるのです。

妊娠中に歯周病の症状がある場合、歯周病のない人に比べて、早産のリスクが約2倍、低体重児出産のリスクが約3倍高くなるという研究報告もあります。妊娠中も定期的に歯科検診を受け、急速に歯周病が進行しないようケアをしましょう。

 

妊娠性歯肉炎を予防するセルフケア

妊娠性歯肉炎の予防には、毎日の丁寧なセルフケアも欠かせません。

できるだけ丁寧に歯磨きをすることが最も大切です。つわりなどで歯ブラシを口に入れることが難しい場合は、洗口液を活用したり、子供用の歯ブラシやワンタフトブラシなどヘッドの小さいものを使ってみるなどの工夫をするとよいでしょう。

歯肉炎を予防するための歯磨きの基本は、歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に当て、小刻みに動かすように磨くことです。力を入れすぎないように気をつけ、1箇所につき10往復は磨くようにしましょう。

 

妊娠中も定期的なプロフェッショナルケアを

妊娠中のどの時期であっても、歯科医院でのプロフェッショナルケアは受けられます。つわりがひどい場合や臨月近くで長時間仰向けになることが難しい場合を除き、体調と相談しながら受診するようにしましょう。

妊娠中も丁寧なセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアで、お口の健康を維持しましょう。

2024.12.13子どもの指しゃぶりは歯並びに影響する?

こんにちは!

今回は、子どもの指しゃぶりと歯並びの関係、また、指しゃぶりをやめるタイミングや声掛けについてご紹介します。子どもが指しゃぶりをしていると歯並びが悪くなる、と聞いたことのある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

指しゃぶりと歯並びの関係

指しゃぶりとは、指を上の歯の裏側(口蓋)に押しつける仕草です。中には、お母さんのお腹の中にいる頃から指しゃぶりをしている赤ちゃんもいます。指を押しつける力によって、上の前歯は上前方に、下の前歯は後下方に圧迫されます。

3歳以降も日常的に指しゃぶりをしていると歯並びに影響を及ぼすことがわかっており、次に挙げるような「不正咬合」を引き起こす原因になるといわれています。

出っ歯(上顎前突)
上の前歯に対して強い圧力がかかって前歯が前方に傾斜することを、出っ歯といいます。

開咬
奥歯を噛み合わせても、上下の前歯に隙間ができて咬みあわない状態を開咬といいます。前歯で噛むことができないため、奥歯の負担が大きくなるほか、発音や咀嚼、顎の発育などにも影響を及ぼします。

狭窄歯列弓
指を吸う力により歯列全体に圧力がかかり、歯列が狭くなることを狭窄歯列弓といいます。歯列が狭窄すると歯が生えてくるスペースが不足し、歯並びに影響しやすくなります。

 

指しゃぶりをやめるタイミングと声掛け

乳児期の指しゃぶりは生理的なものとして見守っていても大きな問題はありません。3歳ごろには指しゃぶりをやめられるよう、少しずつ気をつけていきましょう。

子どもは環境の変化に対する不安やストレス、寂しい気持ちを紛らわせるために指しゃぶりをするともいわれています。ちょうど3歳頃は入園などで環境が大きく変わるタイミングでもあり、一度はしなくなった指しゃぶりを再びするようになる子どももいます。

指しゃぶりの行動そのものを叱りつけてしまうと、それがストレスとなりかえって逆効果になる場合もあるため、子どもの不安やストレスを取り除けるような環境づくり、こまめなコミュニケーションを心がけましょう。一緒に目標を達成できるような前向きな声掛けなども効果的です。

このように、指しゃぶりは歯並びに影響を与える可能性があります。無理のない範囲でやめられるように促し、それでも難しい場合は歯科医院に相談しましょう。

2024.11.14矯正治療中に妊娠したときに気をつけたいこと

こんにちは!
矯正治療中に妊娠がわかった場合、治療を継続できるのかなどご不安に思うこともあるかもしれません。今回は、矯正治療中に妊娠しても治療を続けられるのか、また妊娠したときに気をつけたいことについてお話ししていきます。

 

矯正治療中に妊娠しても治療を続けられる?

矯正治療中に妊娠しても、治療を継続することに問題はありません。つわりの症状が重い場合や、お口の中に矯正装置があることがつらい場合は、担当医とよく相談し、治療を中断することを検討してもよいかもしれません。体調が落ち着いて精神的にも余裕ができてから治療を再開しましょう。

また、妊娠中の歯科治療では抜歯やレントゲンなど気をつけたほうがいいことはいくつかありますが、矯正治療中に妊娠がわかった場合は既にこれらの治療や検査の段階は過ぎているものと思われます。必要に応じて、担当医に相談するようにしましょう。

 

矯正治療中に妊娠したときに気をつけたいこと

妊娠中はつわりが重くて思うように歯磨きができないことから、お口のトラブルが増える傾向にあります。また、エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンの分泌が亢進し、平常時に比べて細菌の活動が活発になることからお口の中の環境が変化しやすくなります。

中でも、「妊娠性歯肉炎」には特に注意が必要です。妊娠性歯肉炎の症状は一般的に知られている歯周病とほぼ同じで、歯ぐきから出血したり、歯ぐきに腫れが生じます。しかし、この歯肉炎で気をつけたいのは、早産や低体重児出産のリスクが高まるということです。歯周組織に炎症が起こることで増えるプロスタグランジンという物質が、子宮を収縮させたり子宮頸部を拡張させるような作用をもつからです。したがって、可能な限り毎日の丁寧な歯磨きを心がけ、少しでも症状がみられる場合は早めに治療を進めるようにしましょう。

 

臨月~出産後の矯正治療

臨月ごろからは、矯正治療をお休みする方がほとんどです。中断期間中に動いた歯が後戻りしないよう、保定装置(リテーナー)をつけていただくこともあります。臨月に入る前に、矯正担当医とよく相談しましょう。

出産後は、赤ちゃんがいる生活のリズムや、ご自身の体調が落ち着いてから治療を再開しましょう。当院では、保育士常駐の託児スペースを生後2週間からご利用いただけます。出産後も安心してご来院ください。

 

まとめ

今回は、矯正治療中に妊娠しても治療を続けられるのか、また妊娠したときに気をつけたいことについてお話ししました。妊娠中、そして出産後も安心してご通院いただけるようスタッフ一同サポートいたしますので、少しでも不安なことがありましたらお気軽にご相談ください。

2024.10.11シーラントでお子さまの歯をむし歯から守りましょう

こんにちは!
今回は、お子さまの歯をむし歯から守るシーラントについてご紹介します。むし歯予防として小児歯科で行われる処置のひとつに、シーラントがあります。シーラントとはどのような処置なのでしょうか?

シーラントとは

シーラントとは、奥歯の溝を物理的に埋めることでむし歯を予防する方法です。むし歯を予防する一定の効果があることも数多く報告されており、4年以上で約60%のむし歯を予防する効果があるともいわれています。また、フッ素塗布と併用することでさらに効果が増すという研究結果もあります。

シーラントの特徴

シーラントのメリットと気をつけるべき点を以下にご紹介します。

・シーラントのメリット

奥歯は溝が深いため歯ブラシの毛先が届きにくく、磨いたつもりでも汚れが落とし切れないことはよくあります。小さなお子さまの場合は特に、むし歯になるリスクが最も高い歯です。奥歯の溝を予め埋めておくことで、むし歯になるリスクを軽減できることがシーラントの最大のメリットです。

シーラントは、歯を削ったり痛みを伴うような処置ではありません。処置時間も15~30分程度と短く済むので、小さなお子さまでも安心してお受けいただけます。特に、6歳臼歯といわれている永久歯の生え始めはむし歯になりやすいので、ぜひ歯科医院でシーラントの処置を受けましょう。

・シーラントで気をつけたいこと

シーラントは永久にその効果が続くものではありません。特に奥歯はものを噛んだりする際に大きな役割を果たす歯なので、取れたり欠けたりすることはよくあります。シーラントが取れたり欠けたりしたままにしておくとむし歯のリスクは高まってしまうので、定期的に歯科医院でチェックをしてもらい、必要に応じて再処置するようにしましょう。

また、シーラントをしたから歯を磨かなくても大丈夫!ということではありません。自分では気づかないほどのシーラントの僅かな欠けと歯のすき間からむし歯になるようなこともあります。その場合、残っているシーラントでむし歯が隠され、知らないうちにむし歯が進行していた、ということにもなりかねません。シーラントの処置をしたあとも、毎日の丁寧な歯磨きを心がけましょう。

このように、シーラントはしっかりとメンテナンスをすることでむし歯を予防してくれる大変有効な処置です。ご希望の方は、お気軽に当院までご相談ください。

2024.09.13歯磨きの後のうがい、正しい方法と回数をご紹介します

歯を磨いた後、うがいをしますよね。
このうがいの正しい方法と回数をご存知でしょうか?

市販されている多くの歯磨き粉には、フッ素(フッ化物)が配合されています。フッ素はむし歯を予防してくれる成分で、次のような効果があります。

耐酸性および結晶性の向上

歯の表面のエナメル質は、ハイドロキシアパタイトとよばれる結晶からできています。ハイドロキシアパタイトは酸に弱く、酸により結晶構造が壊されることで、むし歯になります。フッ素の効果により、ハイドロキシアパタイトはフルオロアパタイトという安定した結晶構造に変換されるため、歯質が強化されるのです。歯質が強化されるということは、むし歯へのなりにくさに繋がります。特に、お子さまの乳歯はエナメル質が柔らかいため、フッ素の力で歯質を強化することはむし歯予防効果を期待できます。

抗菌/抗酵素作用

フッ素は抗菌作用が高いため、むし歯原因菌をはじめとする様々な細菌がお口の中で増殖するのを防ぎます。さらに、むし歯原因菌が産出する酵素が歯を溶かす酸をつくる過程を、フッ素がブロックします。

エナメル質の再石灰化促進

脱灰によって歯のエナメル質から溶け出したカルシウムやリン酸が、唾液によって再びエナメル質にとりこまれ、失われた部分を補うことを「再石灰化」といいます。フッ素の効果により、唾液中のリン酸イオンやカルシウムイオンが歯に付着しやすくなり、再石灰化を促進します。

特に歯磨き粉を使って歯を磨いた場合、口の中に歯磨き粉が残らないようにしっかりゆすがなければと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、うがいを何回もしてしまうと歯磨き粉に含まれるフッ素などの有効成分が一緒に流れ出てしまうのです。これでは、せっかくの成分が歯やお口の中に残りません。したがって、うがいは「1回」軽くすすぐ程度で問題ありません。